イワカラマツ

イワカラマツ
長野県上田市 2023年6月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: キンポウゲ科 Ranunculaceae
: カラマツソウ属 Thalictrum
: イワカラマツ
T. sekimotoanum
学名
Thalictrum sekimotoanum Honda (1938)[1]
シノニム
  • Thalictrum minus L. var. sekimotoanum (Honda) Kitam. (1962)[2]
和名
イワカラマツ(岩唐松)[3]
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イワカラマツ(岩唐松、学名Thalictrum sekimotoanum)は、キンポウゲ科カラマツソウ属多年草。植物体全体に微細な腺毛が生え、粘着する[3][4][5][6][7]。別名、ナツカラマツ[1][6][7]

特徴

植物体の高さは50-150cmになり、上部が分枝し、全体にアキカラマツ T. minus var. hypoleucum に似る。葉柄の両面に微細な腺毛が密生し、粘液を分泌して粘る。茎につく葉は互生し、葉身は2-4回3出複葉になる。花期はアキカラマツより明らかに早く6月に咲く。は大型の円錐状の花序につく。花弁はなく、片が早く落ちるので、多数の雄蕊の黄色い葯が目立つ。果実は長さ4mmの縦の稜線が目立つ紡錘状の痩果になり、果柄はない。花序、萼片の外面、雄蕊、痩果にも微細な腺毛が密生し粘る。染色体数は2n=42[3][4][5][6][7][8]

分布と生育環境

日本固有種[5]。本州の栃木県山梨県長野県に分布し[6]、日当たりの良い礫地や岩壁に生育する[3][6][7]。ごくまれに産する[7]。この他、秋田県[3]埼玉県[5]に分布する情報がある。

名前の由来

和名イワカラマツは、「岩唐松」の意[3]種小名(種形容語)sekimotoanum は、栃木県の教員で植物研究者の関本平八 (1889-1969) への献名。関本は1938年6月、栃木県でこの植物を採集し[9]本田正次が同年『植物及動物』誌において新種として記載発表した[1]

種の保全状況評価

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次のとおり[10]

  • 青森県-重要希少野生生物(Bランク)
  • 岩手県-情報不足
  • 秋田県-準絶滅危惧種(NT)
  • 山形県-絶滅(EX)
  • 栃木県-絶滅危惧II類(Bランク)
  • 群馬県-絶滅危惧IB類(EN)
  • 神奈川県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 長野県-絶滅危惧II類(VU)
  • 広島県-絶滅危惧II類(VU)
  • 香川県-絶滅危惧II類(VU)

ギャラリー

  • 茎につく葉は互生し、葉身は2-4回3出複葉になる。
    茎につく葉は互生し、葉身は2-4回3出複葉になる。
  • 萼片は早落性、多数の雄蕊の黄色い葯が目立つ。
    萼片は早落性、多数の雄蕊の黄色い葯が目立つ。
  • 果実は縦の稜線が目立つ紡錘状の痩果になり、果柄はない。花序、痩果にも微細な腺毛が密生し粘る。
    果実は縦の稜線が目立つ紡錘状の痩果になり、果柄はない。花序、痩果にも微細な腺毛が密生し粘る。
  • 生育環境。日当たりの良い岩壁に生え、下垂している。
    生育環境。日当たりの良い岩壁に生え、下垂している。

分類

イワカラマツは、日本産のカラマツソウ属のなかでアキカラマツ節(Sect. Thalictrum)に属する。本種は、1938年に本田正次によって、独立種、Thalictrum sekimotoanum として記載された[1]。1962年には、北村四郎および村田源によって、「原色日本植物図鑑草本編II(離辨花類)に発表した新名及び新見解」が記載され、イワカラマツは独立した種から、アキカラマツの基本種である Thalictrum minus変種 T. minus var. sekimotoanum として階級移動された[2][11]

独立種 T. sekimotoanum として扱っているのは、国(環境省)のレッドデータブック・レッドリスト、群馬県を除く該当する県のレッドデータブック・レッドリスト[10]清水建美 (1982) による『日本の野生植物 草本II合弁花類』「キンポウゲ科カラマツソウ属」[7]、米倉浩司 (2015) によるYList[1]、2013年刊行の山と溪谷社『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』「イワカラマツ」があり[3]T. minus の変種、T. minus var. sekimotoanum として扱っているのは、群馬県のレッドデータブック・レッドリスト[10]、門田裕一 (2011) による『日本の固有植物』「キンポウゲ科カラマツソウ属」[5]、門田裕一 (2016) による『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」[6]がある。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e イワカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b イワカラマツ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b c d e f g 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』pp.238-239
  4. ^ a b 『原色日本植物図鑑 草本編II(改訂版)』p.237
  5. ^ a b c d e 門田裕一 (2011) 『日本の固有植物』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.51-52
  6. ^ a b c d e f 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」p.167
  7. ^ a b c d e f 清水建美 (1982)『日本の野生植物 草本II離弁花類』「キンポウゲ科カラマツソウ属」p. 84
  8. ^ 田村道夫、「日本及び朝鮮のカラマツソウ属」、『植物分類,地理』Acta Phytotax. Geobot. Vol.15, No.3, p.86,88, (1953).
  9. ^ 芳賀町総合情報館、没後50年 植物学者 関本平八-その功績と芳賀町の自然を考える-展示資料一覧、 2019.
  10. ^ a b c イワカラマツ、日本のレッドデータ検索システム、2023年8月11日閲覧
  11. ^ 北村四郎、村田源、「原色日本植物図鑑草本編II(離辨花類)に発表した新名及び新見解」、『植物分類,地理』Acta Phytotax. Geobot. Vol.20, p.203, (1962).

参考文献

  • 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑 草本編II(改訂版)』、1984年、保育社
  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II離弁花類』、1982年、平凡社
  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 林弥栄初版監修、門田裕一改訂版監修、平野隆久写真、畔上能力他解説『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム
  • 田村道夫、「日本及び朝鮮のカラマツソウ属」、『植物分類,地理』Acta Phytotax. Geobot. Vol.15, No.3, p.86,88, (1953).
  • 北村四郎、村田源、「原色日本植物図鑑草本編II(離辨花類)に発表した新名及び新見解」、『植物分類,地理』Acta Phytotax. Geobot. Vol.20, p.203, (1962).
  • 芳賀町総合情報館、没後50年 植物学者 関本平八-その功績と芳賀町の自然を考える-展示資料一覧、 2019.

外部リンク


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